ラノベアニメについて、「冴えない彼女の育てかた」を観て考える
私はラノベアニメをあまり見ない。
私が中学生の頃、世はまさにラノベアニメ黄金期であった。「デュラララ!!」「とある魔術の禁書目録」「バカとテストと召喚獣」etc…
ここに挙げたのはいづれにしても人気作品だし、中学生の私はこれまで知らなかった世界観にあふれていたこれらの作品にドハマリした。ラノベもいろいろ買い集めた。
それらの作品が全盛期を迎えてから、もう6、7年ほどになるだろうか。
別に避けていた理由があったわけではないけれど、高校生になって見るアニメの傾向がキャラクターが可愛いアニメからSFやロボットアニメに移り変わっていったことで、次第とラノベアニメは見ないようになってしまった。
先日、ハライチ岩井勇気のアニニャンという私が毎週聞いているラジオがあるのだけれど、その初ゲストとして松岡禎丞さんが出演していた際に「冴えない彼女の育てかた」の話題が出ていて、それを弟に推められたのがきっかけで見てみることにしてみた。
冴えない彼女の育てかたのあらすじは以下のようだ
春休み、アニメグッズ購入費用を得るためにアルバイトしている高校生・安芸倫也は、桜の舞う坂道で出会った少女に興味を抱き、彼女をメインヒロインのモデルにした同人ゲームの作成を思いつく。1か月後、倫也はその少女が名前すら知らないクラスメイト・加藤恵であることを知った。
筋金入りのオタクだがイラストもシナリオも書けない倫也は、同学年の美術部エースで隠れオタクの新進同人イラストレーター・澤村・スペンサー・英梨々と学年1位の優等生の先輩で人知れず新人ライトノベル作家として活躍している霞ヶ丘詩羽を誘い、恵の協力でなんとか同意を取りつけ、コミケ参加を念頭にサークルとしてゲーム作りを始める。-wikipediaより引用
私が脱オタ・受験と離れているうちにいつの間にかラノベアニメの存在が変わってしまった。やたらと増えた「ゼロの使い魔」に端を発する異世界転生モノと、学園ハーレムものがいつの間にか大勢を占めるようになっていた。
冴えカノはそれで言えば俺妹のような、オタクを主人公にした学園ハーレムモノの作品だ。深夜アニメというものはオタクが消費するものだし、そのオタクが主人公の物語というのはあって然るべしだ。
そもそもオタク主人公というものが私にとってだいぶ引っかかるものだったのだ。オタクが書いたオタクの物語をオタクが消費するという過程にオタクが入り込みすぎてて、もっと言えばそんな主人公に感情移入することがあまりできないと言うか、普段オタ隠しに勤しんでいる私にしてみればそんなにオタクをオープンにしている作品を見てかつての自分を思い出すというような、共感性羞恥のような感情になってしまうのも嫌だったし、現実世界でよくいる声が大きいオタクみたいなのが生まれる要因がこういう作品にあるんじゃないかなとも思うし、そもそももう成人していい年して萌えアニメ(死語)を見るのもなあと思ってあまり率先して観ようとは思わなかった。でも、観た。
観た結果…
くっそかわいい~~~~~!!!
どのキャラもめっちゃかわいい~!
もういろんなキャラクターが出てくるけど、どれもテンプレかっていう位いろんなキャラが出来てて好き!!
霞ヶ丘詩羽先輩はわかりやすく天才肌でSっけというか年上ならではの余裕がありつつ、プライドと実力を兼ね備えているって感じで好き!あと、学校にあまり友だちがいない、作る気がないみたいな女性が個人的にカッコよくて好きなのでそれで言ったら非の打ち所がないキャラだった。
2期の終わりにプライドを打ち砕かれ震えたり、普段は軽口を叩いている安芸倫也くんに対してサークルを離れる旨を話すシーンや、過去に自分の作品に意見を貰おうとしたとことか感情を表に出すところでもまた新たな魅力があって好き。やっぱクール系美少女キャラは最高だな!
因みに、どこでとったアンケートかわからないけどCV.茅野愛衣のキャラクター投票で3位だったらしいですよ。
澤村・スペンサー・英梨々はもうわかりやすくツンデレみたいな感じで好き!というか萌えを理解している人間でここまでわかりやすいキャラクター嫌いな人いないでしょ。
幼馴染っていうキャラ設定も、安芸くんと離れることになってしまったっていうお互いがお互いに対して負い目を感じて居ながらも関係を続けている感じとか。
あとやっぱり年末に一人で別荘にこもって絵を描いていたとことか、自らの実力を伸ばすことに貪欲なところとか。安芸くんじゃないけれどそういうクリエイター精神みたいなのって受け取る側からしたら殿上人のもので理解し難いんだけど、サークル離れるときに倫也の近くだと成長できないと泣く場面とか、もうめちゃくちゃ健気で好き。
2期になると他のヒロインに輪をかけて多彩な表情を見せてくれていたのが好き。デフォルメチックなアニメーションがめちゃくちゃドハマリしてて最高。ただ、ここまで安芸くんとの距離が近くなったのにまた離れ離れになってしまうというのもめちゃくちゃ悲しい。本人の「幼馴染ポジション」に対する固執も可愛らしかったし。やっぱ幼馴染キャラは最高やな!
加藤恵は立ち位置がめちゃくちゃ好き!というか、安芸くんの気持ちが私にはとてもわかるのだけれど、自分がめちゃくちゃ可愛いと思っている女の子ってプロデュースしたくなるよね!というかこのアニメってオタク版野ブタ。だったりする?
他のヒロインがわかりやすくアニメっぽいテンプレキャラで固められているのに対比して普通のそこそこ可愛い女の子っているのがとても良い。というかそれがこのアニメの肝になっているところだと思う。安芸くん風に言えば加藤は突然なんとなく髪型を変えたりとかアニメヒロインとしてはご法度みたいなことも平気でしたりとか、安芸くんが思いがけないほど情熱を持って物事に取り組んだりとか、無感情に見えてちゃんと心配したり怒ったりするところとか、人間味があって好き。アニメでは詩羽先輩と英梨々には個別イベントが有ったけれど加藤とはあまりなかったので、そのへんが続編では描かれるであろうということで満を持してメインヒロインの魅力を見せつけてくれるのかなと期待している。いや、今の時点でもめっちゃ魅力的だけれど
因みに私は、冬の加藤の髪型が好きです(ロングで下ろしてるやつ)。あの髪型に変えてめちゃくちゃヒロインっぽくなったし、というかああ言う女の子同級生にいたな~!って感じになってやっぱり等身大の同級生って最高だぜ!
他の女の子もみんな可愛くてみんなだいすき。ただ、アニメ的にはあまり他の女の子のルートが見えないのがなあ。この3人が圧倒的ヒロイン過ぎて。
マイナーキャラを愛する道ははてなく厳しいというのは色んな所で学んでいるので。ただ良いんだよなあ。美知留とかさ、いとこっていうちょうどいい立ち位置でキャラが付きすぎていないのも得点高いんだけどな。
とにかく女の子かわいいしストーリーも人間関係が絡まってて面白かったですよ!
真面目な感想
正直、最初はそこまでハマらなかった。オタクの主人公が居て、天才系巨乳現役ラノベ作家先輩と金髪ハーフツインテール貧乳幼馴染という、なにそのわかりやすいキャラ設定。しかも、両人とも主人公に好意を抱いてるって、あ~この感じラノベのハーレムアニメだな~!といった感じ。
まあ、もともと俺妹とかにドハマリしていた類のオタクではあったのでこういうアニメは嫌いではなかったし、懐かしい感じがした。
冴えカノに私がここまでハマった理由は、キャラクターの魅力ももちろんあるが、それよりは俺妹などのテンプレラノベアニメをメタ的に見せていたということだ。
このアニメの冴えないヒロインこと加藤恵ちゃん。彼女は決して主人公に惚れ込んでいるとかではなく、終始一般人の視点からわかりやすくテンプレされたオタクを演じる主人公を諭す、みたいな立ち位置にいた。
あくまでストーリー全体はテンプレラノベアニメの形を取りつつ、主人公のオタク的に暴走した行動やオタクの常識を突きつけられる場面、そしてご都合主義に対するツッコミ、そして決して主人公に靡かないポジションであった加藤の魅力が私を惹きつけた。
上で例に上げた「異世界転生モノ」で言えば、「この素晴らしい世界に祝福を!」がまさしく同じような立ち位置のアニメだった。
異世界転生という世界観の中で繰り広げられるのは現世での記憶や技術を頼りにしてヒーローになったり主人公だけの特殊能力で無双するわけでもなく、諦めて日常を送るという、「異世界転生モノ」をメタ的にプロデュースした作品だ。
「冴えカノ」も同じようにハーレムアニメのような体裁を取りつつ、加藤という主人公と一定の距離があるメインヒロインの存在がアクセントになっていたこと、そもそも主人公がオタクであるという時点でもハーレムアニメという世界観に対するメタ要素になっていることも相まって、胸焼けすることがなく観続けることが出来た。私はゴリゴリのハーレムアニメ観てると胸焼けがするんだ。
キャラの話で言えば、主人公の安芸倫也くんは本当に情熱しかない。情熱があっても技術と実力がはなく、自分を慕ってくれている女性に対する発言も全然的を射ていない。
ただ、自分の情熱に任せた行動を起こすので、それがきっかけで人間関係にほころびが生まれたりもするし、誰かを傷つけたりもする。そんな、デフォルメされたようなオタクであるのにもかかわらず彼の行動から生まれる亀裂の現実感があまりにも大きくて、それがストーリーの出汁になっている。全然頼れないけど好きな主人公に私の中でなってしまった。
その上で、ストーリーも学園青春モノって感じでよかった。
まあ2期までに関しては現役ラノベ作家の霞ヶ丘詩羽先輩と、現役人気同人漫画作家の澤村・スペンサー・英梨々という天才二人におんぶにだっこだったが、その中で各キャラにスポットをしっかり当てていた事と、2期の終わりでその2人がフェードアウトし、いよいよ主人公とメインヒロイン加藤の2人3脚を始めるところまでのお膳立てがうまい具合に整えられたことも素晴らしい構成だと思う。
そして、ここで続編が劇場版で制作決定している。
「冴えない彼女の育てかた」劇場版制作決定!! - News | TVアニメ『冴えない彼女の育てかた♭』公式サイト
私は完全に後追いになってしまったが、どうやら劇場版が公開するらしい。最近は本当に劇場アニメを見るために映画館に走ることが多くなってしまったが、私としては当然これも見ることになるだろうな。
冴えカノを見た結果、どうやら私の中でラノベアニメとの折り合いが多少は付いたようだ。ストーリーの中で様々なイベントを経ていくうちどんどんキャラクターが好きになっていく。これはどちらかと言うと懐かしさのようなものもあるが、アニメを見て最近はこういう楽しみ方を出来ていなかったなあと思ったぞ。
映画も楽しみにしています。いまさら冴えカノを語ってみた新野でした。