”四畳半神話大系”の聖地、あのラーメン屋がいつの間にか閉店していた。
京都・出町柳に時折出現する屋台ラーメンをご存知だろうか。名を猫ラーメンと言い猫から出汁をとっているという噂ではあるが真偽の程は定かではない。
猫ラーメンは小説、及びアニメ四畳半神話大系において主人公が度々通う謎のラーメン屋であり、怪しげな客、汚い学生たちが出入りする屋台であるがその味は無類である。
というのは一旦端においといて、その猫ラーメンという屋台にはモデルが存在する。
名をはらちゃんラーメンと言い、京都出町柳に時折出現してはインターネット上での評価も高く、どうやら噂に違わぬ名店であったそうだ。
ホームページを見るとなんとも食欲を唆られるラーメンの写真がデカデカと表示される。このサイトは客と店をつなぐ重要なツールであり、なぜ重要かと言うとこのはらちゃんラーメン、先程話したとおり本当に時折しか営業しないのだ。
毎日17時頃になるとブログが更新され、店主の短い日記のような他愛もない話とともに「○月○日 休みとなります」あるいは「営業します」という一文がみられる。
はらちゃんラーメンは不定期に休んでおり、客が行こうと思っても店がやっていなければ仕方がない。
因みに私ははらちゃんラーメンに赴いたことはない。ただ、いつか京都へ旅行することがあれば、そしてその日にたまたま営業していたら食べてみたいと思い、度々ホームページをチェックしていた。無類とまで言わせるほどだ、気になるじゃないですか。
ブログの記事を見る限りだとどうやらここ最近は店主の体調も良くないようで、2018/09/27日の記事を持って更新が途絶えている。そしてそこには「閉店します」との文字が。えー。
理由は特に明かされていない。諸事情とだけ書いてある。
最後に営業していたのはいつだったのかというのをさかのぼってみてみると8月22日だった。ということは最後の営業は閉店の1ヶ月以上前ということになる。まさかその時食べた客も、それが最後の味であるとは夢にも思っていなかっただろう。
保存されない物というのは貴重だ。物事には保存されるものとされないものがある。昔既だ小さな部屋は今は誰かが住んでんだなんてこともあるし、倒壊していまでは空地になってしまっている場合もある。
食べ物の場合は特に保存性がなく、はらちゃんラーメンを食べる機会は今後二度となくなってしまったということだ。この店が屋台であったということも輪をかけて保存性のなさを痛感させられるし、必要のなくなったこのホームページはサーバーとの契約が切れてしまったら閲覧できなくなることだろう。
まして私は食べたことすら無いので記憶に保存しようにも出来ない。存在を覚えておくことは出来るが。
小説で認識して、インターネットで存在を知った私と、かの店との薄い繋がりが断ち切られてしまったようで残念だ。
そんな保存性のなさについて考えてしまったので、ブログに書いておくことで私自身へのアーカイブスにしたい。
それにしても閉店ですか。森見登美彦といえば今をときめく人気小説家だし四畳半神話大系というのはその代表的な作品と言っても過言ではない。世界的に人気な作品だ。
それでも”諸事情”で閉店してしまうのなら仕方がない。健康とかそういう話なのかな。だとしたらお大事に。