SONY SS-F6000と過ごしたオーディオ初心者の頃の思い出
SONY SS-6000が、私のオーディオ人生において初めてのスピーカーだった。
確か、高校進学の際に自分へのご褒美で買ったんだったと思う。近所のハードオフで出会ったそれは、厨房の私の心を強く惹き付けた。
当時は暇さえあれば自転車を使って何度もハードオフでオーディオ機器を見ていた。勿論どれも安物で、ジャンク品ばかりだがそれだけでも時間がすぎるのを忘れるくらい楽しかったし、耳にタコができるほど聴いたハードオフの店内BGMは今でも口ずさむことができる。
ハードオフの一角に、スピーカーコーナーがあった。スピーカーと言っても少年私が特に釘付けになっていたのはトールボーイスピーカーだ。自分の胸ほどもある大きな図体に、でかでかと取り付けられたスピーカーユニットはどれもかっこよかった。
その中でもひときわお気に入りだったのが店内でもホームシアター用みたいなほそっちいトールボーイスピーカーが多いなか、ひときわ存在感を放っていたF6000だった。
その価格10,000円。
当時では大金だが、今考えるとよく状態も悪くないF6000が10,000円で買えたものだと思う。全然安い。今でこそ言える話だが、おなじくSONYのスピーカーではSS-K30EDも聴いたことがあるが、私の中の印象では全然F6000の方が好きな音だった。ネット上での評価も総じて良く、我ながら良い買い物をしたぞお前はと褒めてやりたい気分になった。
それくらいF6000は良いスピーカーだった。今考えても、10,000円で買えるスピーカーの中ではトップレベルに良い音が鳴っていた。
解像度など足りない点もあったが、下手せずとも現在使用しているCM8を上回る低音の量感であった。もちろん質も悪くない。
勿論大きさもあるため、ミニコンポなどで鳴らそうと思ってもろくな音は出してくれない。そんなやつがいるものかとお思いのあなた。そう私がミニコンポでSS-F6000を聴いちゃうおじさんです。ミニコンポでSS-F6000を聴いちゃうおじさんたらミニコンポでSS-F6000を聴いちゃうおじさん♪
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私がF6000を本格的なプリメインアンプで鳴らし始めたのは大学進学してからだ。ミニコンポではなく、アンプに取り替えたくらいで自慢のスピーカーの音がそんなに変わってたまるものかとは考えていたが、まさかこれまでとは。と言うくらい世界が一変した。
すべての音域において音がクリアーになり、低音も高音もしっかりなるようになった。
当時はPCのサウンドカードから引っ張ってきたRCAで接続していたが、恐る恐るONKYO DAC-1000を購入してみるとこれまた大きな違いが現れた。
こうして更に深い道へと足を歩めていくことになる。
言いたいのは、少なくともF6000は上流の変化にきっちり応えてくれる性能は持っているということである。
SS-F6000は、アンプやDACがある程度のレベルに達した際に売り払ってしまった。なのでもう手元には存在しない。しかし、今私が初めてオーディオ機器に触れる人に進めるとしたら、やはりF6000だろう。中古で6000円だとは思えないレベルの音を鳴らしてくれるのは間違いない。
SS-F6000の感触もあってか、私の中でのSONYのイメージは実は結構良い。オーディオ機器メーカーは大手を意図的に買わないようにしているわけでは無いのだが、どうにも食指が伸びない場合が多い。
しかし、SONYのオーディオ機器であったら価格並の性能は必ずあると思って買える。イヤホンでもMDR-EXシリーズなどは解像度が高く私好みだし、ヘッドホンのチューニングも現代人向けになっている。故きを温めて新しきを知るとは言うが、SONYの場合は常に現代を見据えた商品を作ってくれている感じがして好きだ。
できればもう少しオーディオ界隈に顔を出してほしいものだ。日本を代表する企業が力を入れるくらいの市場ではなくなってしまったということなんだろうけれど。
私がオーディオにハマったのは間違いなくこいつのせいである。オーディオ道は不毛かつ得られるものがないという行き止まりの道と取られかねないが、中学生の頃の情熱が今も続いていると考えると、私にとっては大事な小路である。
よくもこんな道に迷わせてくれやがって。