器用貧乏な「Airplay 2」ではAppleは何も成し遂げられない。
iosがバージョンを11.4にアップデートし、新たにAirPlay2という規格が登場したぞ。
Airplayっていうのがどういうものなのかは知っている人も多いよね。Apple製品を用いて、同じネットワーク内にある機器でメディアを再生する機能のことだ。
Macを用いて有線でも使用可能だが、もっぱら主に使われるのはwifiを用いた無線によるミラーリングだと思う。AppleTVやAmazon FireTVなんかの端末を使えばテレビやパソコンのディスプレイにiphoneの画面を写すことができるし、Airplay対応のオーディオ機器を使ってiphoneで再生した音楽をそちらで流したりすることもできる。
そんな便利なAirPlayだが、今回新規格が登場したことでどんなもんになってくれたのか。端的に言って…うーん。ってかんじだ。
私がAirPlayにもとめていたことと言えばさらなる高音質化か、あるいはミラーリングした際の操作と描写における遅延解消みたいなものだ。というかそれぐらいしかなかった。現状のAirplayは規格としてほとんど完成されていて(その点もさすがAppleというか)これ以上を求めようというのも贅沢な話だった。とはいえ向上心がなければ技術が停滞してしまう。そもそもそんな状況で、Airplayという規格が進歩すること自体すばらしいことだとは思う。
AirPlay2になって新たに追加された機能のなかでめぼしいものは「マルチルーム再生」だろう。あるいは上述したミラーリングした際の操作と描写における遅延も多少改善されているらしいがこちらはひとまず置いておこう。
マルチルーム再生。例えばiphoneを操作、もしくはsiriを使って、任意の部屋で音楽をかけるようにする技術だ。
AirPlay2が何のために登場したかと言えば、そこにはスマートスピーカーという言葉がついて回るだろう。
Appleは2月9日にスマートスピーカー「Home Pod」を発売した。これは未だ米国のみでの販売にとどまっているが、Airplay2の実装はHome podの普及を見越してのことだと思われる。
要は家庭内のネットワークにいくつものHome podを接続させておけば、それぞれに対してAirPlay2のマルチルーム再生を活かすことができる。
まあ、これが実際のこと必要なのかどうかって前提もある。
というのも私のようなオーディオオタクっていうのは、極上のオーディオ機器がワンセット揃っていればそれでいいって人だ。1機のアンプとプレイヤーに、1ペアのスピーカーがあればそれで良い。それをいくつもの部屋に揃えようなんて言うのはよほど贅沢なお金の使い方をする人だろうし、実際そんな人はいない。いくらHome podが高音質を言われたところで、上に書いたみたいなガチのオーディオ機器に勝てる音質では到底無いのでオーディオマニアはマルチルーム再生には見向きもしないだろう。
で、あればだよ?マルチルーム再生が必要なのは誰なの?っていう話になるけど…これが突き詰めて考えてみるとよくわからないんだよね。
例えば一人で住んでる人なら、ワンルームとかそんなサイズの部屋でAirplay2のマルチルーム再生を活かすことなんてできない。という前提の元考えればターゲットは世帯を持っている人になるはずだ。
とはいっても自宅でそんな部屋をコロコロ歩き回るかね?唯一、掃除機をかけたり洗濯物干したりなんかしようと思ったらいろんな部屋を行き来するかも知れないけれどさ…
そもそもHome podは349ドルという強気の価格設定だ。GoogleやAmazonのスマートスピーカーが安価なものでは50ドル前後で購入できることを考えると、いくら技術が詰め込まれていても相応の機能が使えなければ意味がない。要は、マルチルーム再生を使うために複数台買うというならもっと低価格なものでなければ購入しない、という層は少なくないはず。まあ経済的に安定しているお米の国の方々なら話は別なのかも知れないけれど。
というかそもそも、スマートスピーカーで得られる「IoT」とマルチルーム再生というのがアンマッチなのだ。スマートスピーカーによる「IoT」機器の普及によって座りながら声だけでIoT家電を操作したり、ロボット掃除機を動かしたりどんどん動かなくていい環境を作り出しているというのに、マルチルーム再生を使う機会があるのだろうか??
その上、このマルチルーム再生を行うにはもう一つハードルがある。それはSiriによる操作を使うには、Apple Musicに加入しているか、ライブラリに該当楽曲が存在する必要があるということだ。
先程述べたように、オーディオマニアはマルチルーム再生を使わない。そのうえで考えてほしいのが、まずライブラリの楽曲をsiriに見つけることができるか??オーディオマニアでない一般的なユーザーが、タグ付けの事なんて考えるのか?
ライブラリの楽曲管理がちゃんと行われていなければsiriに見つけてもらうことはできない。iTunesのライブラリでタグ付けがキチンと行われているかどうかという話だ。そもそも日本でしようとする場合、楽曲管理においては必ずしも漢字がネックになると思う。
名前順にソートしたときに「一青窈」がライブラリの上位にいたりしないだろうか?
「いちとよう」ではなく「ひととよう」。音声認識を行う上ではこれは結構厄介で、例えばApple music内の音楽を再生したい場合であれば、「Apple music側で」読み仮名を付けてやれば良いのだが自分のライブラリの楽曲となるとそれは別だ。iTunesを開いて読み仮名を設定してやる必要がある。そんなことを全ユーザーに負担させるのかね??
問題のApple musicもどの程度普及しているかと言えば、市場を牛耳っているとは言えない。今回の件しかりApple musicは他のサブスクリプションサービスとの差別化に「Apple製品との連携」を売りにしている。
とは言え、Verto Analyticsの発表において、米国のサブスクリプションサービスのシェア率ではSpotifyと競っているのが現状で、未だ覇権を奪っているという状況には至っていない。
The Verto index: What are the most popular streaming music services?
なぜならSpotifyは最高のサブスクリプションサービスだからだ。
というのは冗談にしろ、これには理由がある。SpotifyはAppleのような閉じたコミュニティではなく、対応製品が多くのメーカーに及ぶ特徴がある。特にAmazon Echoシリーズの対応によって米国には広く普及している。
スマートスピーカー市場で言えば下記リンクを参考にすると
アマゾンだけで米国EC市場のシェア43%、止まらない成長の理由 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム
Amazon Echoシリーズだけで43%。これにGoogleとAppleが追随するのだが、シェア率ではAmazonに分がある。
AirPlay2の登場によって、果たしてマルチルーム再生ができるようになってHome podが更に普及するのか??
優秀なAirplayという規格に、蛇足を加えてしまう結果にならないだろうか?
因みに、ミラーリングはできないもののマルチルーム再生というのはAmazon Echoシリーズではとっくに搭載されている機能だ。
長々と話してしまったが、Appleはもうiphoneとipadだけ作っていてそれ以上手を広げなくても良いのでは…MicrosoftがOS開発のノウハウを生かして乗り出したWindouePhoneは結局鳴かず飛ばずだった過去を考えると、Microsoftを過去のものとしたAppleが無理に時流に乗ろうとしているように見えてならないぞというのが、1ユーザーとしての感想だ。